肝機能障害の幹細胞治療
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肝機能障害の怖さ
肝臓は、タンパク質・脂質を分解しやすくする胆汁を生成する他、有害物質の解毒や分解を行ったり、エネルギーに変えるための栄養素を蓄えるなど、重要な役割を持ちます。
しかし、肝機能に障害が起きても気付きにくいことがネックで、沈黙の臓器とも呼ばれます。
食べ過ぎ・飲みすぎによる脂肪肝や、ウイルス性の肝炎などによって肝機能障害が起こると、肝臓の線維化が進みます。
肝臓の線維化がさらに進行すると、肝臓が機能しにくくなる肝硬変となり、やがて肝がんという重篤な病気を発症して死亡リスクが高まるため、決して軽視せず注意が必要です。
肝機能障害の種類
脂肪肝
中性脂肪が肝臓に蓄積してフォアグラ状態になることを脂肪肝といいます。
エネルギーの摂取と消費バランスが取れていれば良いのですが、脂質や糖質の摂り過ぎや運動不足等で消費しきれない脂肪酸やブドウ糖が中性脂肪として肝臓に蓄えられることで、同様に、お酒の飲み過ぎでも起こります。ただし、日本人の脂肪肝の原因で多いのは、飲み過ぎではなく、食べ過ぎによるもので、これを非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼び、実はお酒を飲まない人の脂肪肝の方が危険と言われています。
ウイルス性肝炎
肝炎を引き起こすウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型などがあり、肝がんの原因の約65%がC型肝炎ウイルスで、約15%がB型肝炎ウイルスに感染しています。肝炎ウイルスに感染したまま放置していると、多くの場合は急性肝炎やさらには慢性肝炎になり、肝細胞の破壊・再生が繰り返されることで組織が硬くなる「肝硬変」となり、肝がんを引き起こすリスクが高まります。C型肝炎が原因で肝硬変になった3~8%にあたる人は、1年で肝がん移行しているという調査報告もあるほどです。
肝がん(肝細胞がん)
肝臓にできる悪性の腫瘍で、B型およびC型肝炎ウイルス感染が主な原因だと言われていますが、最近では非ウイルス性の脂肪性肝疾患の患者が肝臓がんを発症するケースも増加しています。
数年のうちに肝細胞の破壊と再生が繰り返され、遺伝子の突然変異が蓄積しすることでがんを発症します。
従来の肝機能障害の治療法
脂肪肝
生活習慣の改善の指導を行い、食事療法と運動療法を併用します。
食事・運動療法に取り組むことで、内臓脂肪を減らすことが有効です。
ウイルス性肝炎
急性肝炎では安静にし、食欲が低下することに対しては水分や栄養を補給するために点滴を行います。慢性肝炎の場合はおもに薬物療法となります。患者の年齢や肝臓の障害の程度によっても治療は異なります。
肝がん(肝細胞がん)
がんとその周囲の肝臓の組織を手術によって取り除く肝切除や全て摘出する肝移植といった外科手術の他、ラジオ波焼灼療法による局所治療や、カテーテルを入れる肝動脈化学塞栓療法があります。
ただし、従来の治療法では、一度障害を受けた肝細胞や線維化した肝臓を、再び正常な状態に戻すことは困難と言われていました。しかし、幹細胞を用いた再生医療なら、再び正常な機能に戻せる可能性があります。
幹細胞治療とは
肝機能障害の幹細胞治療は、患者の脂肪を採取してその幹細胞を培養し、点滴で投与することで肝機能の修復を試みる方法です。
人間の細胞にはさまざまな細胞に姿を変えられる能力を持つ細胞が存在しており、その一つが幹細胞です。
幹細胞は障害を受けて機能が低下した場合や、壊れて働けなくなった細胞を発見すると、細胞分裂して損傷した細胞を補い、機能を修復する働きがあります。
患者本人の脂肪から培養される幹細胞なので、拒絶反応やアレルギーなどの副作用の心配がほぼありません。
安全性が高いことから、最も注目されている最先端医療の一つです。
幹細胞治療の流れ
- 病状の進行具合や障害の程度、これまで受けてこられた治療内容を確認し、血液検査を行います。
- 患者様ご自身の組織を使用するため、少量の脂肪組織を採取します。
- 国の許可を受けた細胞培養加工施設で、脂肪組織から分離した幹細胞の培養・増殖を行います。
- 数週間後、幹細胞を患者様の体内に戻します。
- 投与後は担当医により経過観察を行います。